
散歩時間が長かったりドッグランや海、山などによく行く犬は、感染症に掛かるリスクが高くなります。感染症は軽い症状から、重篤になると死に至る可能性があるものまでたくさん存在します。
愛犬に合った正しいワクチンを接種して、健康的な生活を送りましょうね。
今回は犬のワクチンについて、種類や飼い主さんが準備するべきことをご紹介していきます。
ワクチンの種類

ワクチンは国から接種を義務付けられている「狂犬病ワクチン」と任意のワクチンである、「混合ワクチン」があります。狂犬病は人間などの哺乳類に感染しないために打つワクチンで、混合ワクチンは2種から11種まである複数の病気に効果的なワクチンです。
人が死に至る狂犬病
狂犬病は生後91日を過ぎた犬が1年に1回接種しなければいけない、国から義務付けられているワクチン。致死率が100%の病気なので、必ず接種することを徹底してください。また、狂犬病は様々な哺乳類が感染している可能性があるため注意しましょう。
感染が報告されている哺乳類
- 犬・ネコ・キツネ・アライグマ・スカンク・コウモリ・マングースなど
狂犬病の費用
狂犬病のワクチンは病院によって値段が異なるため、かかりつけの獣医師さんに相談しましょう。一番安く済むのは自分が住んでいる市町村で開催される、「集合狂犬病予防注射」に申し込むことです。市町村の公式サイトをチェックしてみてください。
狂犬病ワクチンの価格の目安は1回3,000円~4,000円ほどです。
感染症事例
日本国内での狂犬病による感染症は1957年以降なく、海外で感染して国内で発症した事例も4件のみ。最近の事例は愛知県豊橋市で2020年6月15日、フィリピンから来日した外国籍の30代の男性が狂犬病に感染し、死亡したと発表されました。
あまり知られていない狂犬病
日本国内では狂犬病予防法が制定される1950年以前は多くの犬が狂犬病と診断され、人も狂犬病に感染して死亡していました。予防法が制定されてからは、7年という短期間で狂犬病を撲滅することに成功。しかし、日本の周辺国を含む世界の様々な場所で現在も狂犬病は流行っており、国外から持ち込まれる可能性があります。
海外旅行によく行く人は狂犬病についての情報を収集し、感染後の知識を最低限理解しておきましょう。WHO(世界保健機関)によると、世界では年間に約6万人の人が狂犬病で亡くなり、アジア地域はその半分の3万人が亡くなっています。
混合ワクチンについて

5種混合ワクチン
5種混合ワクチンは高い免疫原性を含むハイタイターワクチン(少しの抗体でも効果を発揮しやすい)のことで、妊娠犬にも接種できます。
5種混合ワクチンに効果がある病気
- ジステンパーウイルス
- 伝染性肝炎
- アデノウイルス
- パラインフルエンザウイルス
- パルボウイルス
ほとんど家から出ることがなく、他の犬と関わりがない犬は5種混合ワクチンを選ぶといいでしょう。
8種混合ワクチン
8種混合ワクチンは、5種混合ワクチンに含まれているもの+3種類のワクチンのことを指します。
8種混合ワクチン
- 5種混合ワクチン
- 犬コロナウイルス
- レプトスピラ(イクテロヘモラジー型)
- レプトスピラ(カニコーラ型)
犬コロナウイルスは幼犬で発症しやすい消化器症状を起こす感染症ですが、ワクチンによる予防が可能です。現在感染拡大している「新型コロナウイルス」とは別のもの。ただ、新型コロナウイルスは2020年8月3日、犬へのPCR検査の結果「陽性」と発表され、国内で初めてペットに新型コロナウイルスが感染したと確認されました。
レプトスピラは、人とそれ以外の脊椎動物に感染・寄生する病原体により発症する感染症。犬から人に感染するため、心配な人は5種ではなく8種を接種してもらったほうがいいと思います。
外出先に連れていかなくても、散歩する犬は8種混合ワクチンを選ぶといいでしょう。
10種混合ワクチン
10種混合ワクチンは、8種混合ワクチンに含まれているもの+2種類のワクチンのことを指します。
10種混合ワクチン
- 8種混合ワクチン
- レプトスピラ(グリッポチフォーサ型)
- レプトスピラ(ポモナ型)
レプトスピラには多くの血清型があり、よく流行している型のレプトスピラが混合ワクチンには含まれています。他のレプトスピラ型を含んだ単体のワクチンが動物病院にはあるので、かかりつけの獣医師さんに確認しましょう。
グリッポチフォーサ型とポモナ型は最近できたワクチンなので、8種ではまだ心配だという人は10種をおすすめします。
レプトスピラはネズミなどの野生哺乳類によって感染するため、頻繁に飼い主さんと外出する犬は10種混合ワクチンを選ぶといいでしょう。
ライフスタイルによって最適なワクチンを選ぶ
- 5種…ほとんど家の中で過ごす犬や他の犬との関わりがない犬
- 8種…外に出るのは散歩する時くらいの犬
- 10種…一緒に外出先(海や山)に連れていく犬
ワクチンの費用
前提として以下に記載されている価格は、目安として考えてください。ワクチンの価格が定められていないので、かかりつけの獣医師に相談して、事前に確認しておきましょう。
- 5~6種…5,000~7,000円ほど
- 7~8種…6,000~9,000円ほど
- 10種…8,000円~10,000円ほど
コアワクチンとノンコアワクチン
上記で紹介した混合ワクチンは「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」に分類できます。コアワクチンは狂犬病ワクチン以外、法律で義務付けられてはいませんが、全ての犬に接種してもらいたいワクチンです。ノンコアワクチンは任意で接種できるため、飼い主さんが愛犬の状態をみて接種するようにしましょう。
コアワクチン

世界中の国々で感染が確認されている致死性の高い感染症で、コアワクチンはこの感染症から守るためのワクチン。国や地域に関わらず犬や猫に接種すべきと言われているものです。
子犬では6週齢~8週齢で接種を始め、2~4週間隔で続けて接種します。6ヵ月~1年後に再接種を行った場合は、3年以上の間隔をあけて接種すると安全に暮らせることができます。
以下のウイルスによる感染症から予防するものがコアワクチンに分類
- 狂犬病
- ジステンパーウイルス
- アデノウイルス
- パルボウイルス
ジステンパーウイルス
ジステンパーウイルスは空気や飛沫から感染し、呼吸器や消化器官を通して全身に広がっていく急性の病気。母犬からの移行抗体がなくなる子犬の時期に掛かりやすく、治っても後遺症などの症状が残る可能性がある感染症です。
アデノウイルス
アデノウイルスは別名犬伝染性肝炎と呼ばれ、感染した犬の分泌物や排泄物を介して感染する病気。子犬の時に感染すれば重い呼吸器疾患を引き起こすことが多く、最悪の場合は死に至ります。重症から回復しても角膜のこんだくが見られることもあります。
パルボウイルス
パルボウイルスは子犬の時に経口感染する病気。免疫抗体の減衰に伴って発症することが多く、発熱や食欲の低下、下痢の症状が出ます。子犬が多く集まる所では未だに感染が確認されている病気です。
ノンコアワクチン
狂犬病やコアワクチンは接種が必要なワクチンですが、ノンコアワクチンは飼い主さんの任意によって決められます。必ず受けなければならないという規定はないので、必要でなければ受けなくても大丈夫です。
以下のウイルスによる感染症から予防するものがノンコアワクチンに分類
- パラインフルエンザウイルス
- ボルデテラ
- レプトスピラ
パラインフルエンザウイルス
パラインフルエンザウイルスは感染力が強い、呼吸器系のウイルス。一般的に多数の犬が接近する際に発症すると言われています。仕事上の都合で家を空けることが多く、定期的に愛犬をペットホテルに預ける人は、ワクチンを打つことをおすすめします。
ボルデテラ
ボルデテラは別名「ケンネルコフ」と言われ、伝染性気管支炎を原因とする感染症の総称。特に冬場は空気が乾燥するので気道粘膜の働きが弱くなり、感染しやすくなります。この感染症もパラインフルエンザ同様に、多数の犬が接近する際に起こりやすいです。
レプトスピラ
レプトスピラは野生哺乳類動物に保菌され、尿とともに排出されます。尿や汚染された水、土壌に接触することで偶発的に感染します。街で頻繁にねずみを見たことがあり、その近くを散歩している人はワクチンを接種することをおすすめします。
ワクチンアレルギー(副作用)
ワクチンを接種するに当たり、副作用を引き起こす可能性が低確率ですがあります。特に、日本では小型犬種で副作用が報告されています。接種してから15分以内に引き起こるアナフィラキシーショックは、死亡する例も出ています。他の皮膚症状や消化器症状は、時間の経過とともに治ることがほとんどです。
副作用は体質による場合もあるので、ワクチンを接種した後に体調を崩した愛犬は、2回目以降の接種に注意が必要。ワクチンの前後で薬を投与している際は、獣医師さんに伝えてからスケジュールを決めて接種しましょう。
主な副作用
- アナフィラキシーショック…虚脱や呼吸困難など急性のアレルギー
- 皮膚症状…目や口の周りが腫れる
- 消化器症状…下痢や嘔吐
ワクチン接種前に行うこと

ワクチンを接種するにあたり5種や8種など、どのワクチンにすればいいか迷うかもしれません。そんな時は動物病院でワクチンの抗体検査を行いましょう。抗体検査で愛犬が現在持っている抗体の量を知ることができるため、今必要なワクチンが何かを教えてくれます。
ただ現在の抗体がわかったところで、その抗体がどれくらい長持ちするのかはわかっていません。そのため短い間隔で検査をする必要がありますが、これには多大なコストがかかるので非現実的。ワクチン接種予定の1ヵ月前くらいに抗体検査を行い、今ある抗体を確認しましょう。
まとめ
犬の感染症は意外にも身近なところに潜んでいます。感染してからでは手遅れな病気もあるので、かかりつけの獣医師さんに相談して定期的にワクチンを接種してくださいね。
狂犬病は致死率100%なので、「今年は狂犬病ワクチンはいいや」と軽んじることなく、毎年必ず接種するようにしましょう。